平成23年度税制改正大綱にて法人税の改正案が示され、法人税率が引き下げられる見込みです。報道などの中ではよく“実効税率”という言葉が登場します。一般に“法人税等”(最近の決算書表記では“法人税及び住民税”)というのは、[法人税(国税)]と[事業税]と[住民税(県税+市税)]を合わせたもので、これらの税率を単純に足しただけのものを“表面税率”といいます。しかし実際には事業税は損金(経費)になることから実質的な課税所得が下がり、これが実効税率と呼ばれるわけです。(事業税も県税の一種ですが、ここでは計算上の都合で分けて扱います)
よく、現行の実効税率は[40.87%]と表示されますが、その計算根拠は次のとおりです。
●実効税率の計算式
法 人 税 | 30.0% | ||
事 業 税 | 9.6% | ||
都道府県民税 | 1.5% | =(法人税の) 5.0% | |
市町村民税 | 3.69% | =(法人税の)12.3% | |
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単純合計(表面税率) | 44.79% | ||
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実効税率 | 40.87% | 44.79%÷(1+0.096) | |
表面税率÷(1+事業税率) |
なお、実効税率[40.87%]というのは一番高額な場合です。実際は、所得(利益)に応じて税率が変わるように区分されています。
例えば、法人税は所得額800万円までの部分は22%、800万円を超える部分については30%。事業税も、400万円以下は5.00%、400万円超800万円以下の部分は7.30%、800万円を超える部分については9.60%となっています。また、中小法人(資本金1億円以下)と大企業とでも計算方法が異なります。
ですから法人の規模とその年の所得に応じて実効税率も変化するのですが、特定の企業に当てはめて使う場合を除いて、一律40.87%を用いるのが一般的です。
●所得の内訳ごとの実効税率
では、所得の内訳別に見てみるとどうなるかというと、次の表のとおりになります。
年所得400万円以下 | 年所得400万円超 800万円以下 |
年所得800万円超 | ||
表面税率 | 法 人 税 | 22.00% | 30.00% | |
法人住民税 | 3.81% | 5.19% | ||
事 業 税 | 5.00% | 7.30% | 9.60% | |
合 計 | 30.81% | 33.11% | 44.79% | |
実効税率 | 29.34% | 30.86% | 40.87% |
※資本金1億円超の大企業や公益法人については省略しています。
●平成23年改正後の実効税率
改正案に基づく実効税率は、次の表のとおりです。
年所得400万円以下 | 年所得400万円超 800万円以下 |
年所得800万円超 | ||
表面税率 | 法 人 税 | 19.00% | 25.50% | |
法人住民税 | 3.29% | 4.41% | ||
事 業 税 | 5.00% | 7.30% | 9.60% | |
合 計 | 27.17% | 29.53% | 39.50% | |
実効税率 | 25.91% | 27.53% | 36.05% |
※法人税(国税)以外については改正の予定はありませんが、法人住民税は[法人税×税率]で計算されるため、実質的には上記のとおり変わります。
【関連リンク】
《ウィキペディア》 法定実効税率
《首相官邸》 平成23年度税制改正大綱(PDF)
※掲載記事は掲載日現在の法令等に基づくものです。その後の制度の廃止・変更等には対応していませんので、ご注意ください。