欠損金の繰り戻し還付というのは元々あった制度なのですが、長らくその適用が停止されていました。
このほど、平成21年度税制改正でこの不適用制度が改正され、中小企業(資本金の額が1億円以下の法人)に限りこの制度の適用を受けることができることとなりました(措法66の13、措法附47)。(平成21年2月1日以後に終了する事業年度から)
前年度が黒字で納税額があったのに、景気悪化の影響を受け今年度は一転赤字という企業は多いと思われます。前年度に払った税額が少しでも戻ってくるのならぜひにも利用したいところですが、この制度の適用を受けた場合“原則として税務調査が行われる”点についてあらかじめ留意しておくことが必要です。
■制度の概要 | ||||||||||
前期において納税額があった法人が当期において赤字となった場合、前期の納税額の内の一定額を還付を受けることができます。 | ||||||||||
■繰戻し還付の仕組み | ||||||||||
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■適用の要件 | ||||||||||
この制度の適用を受けるためには、欠損金額が生じた事業年度の確定申告書を期限内に提出し、かつ、その提出と同時に、納税地の所轄税務署長に所定の事項を記載した還付請求書を提出する必要があります。箇条書きにすると、次の@〜Bの全ての要件を満たしている必要があります。
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■手放しでは喜べない? | ||||||||||
上でも述べたように、この制度の適用を受けた場合“原則として税務調査が行われる”点についてあらかじめ留意しておくことが必要です。 根拠となるのは、法人税法の「税務署長は、還付請求書の提出があった場合には、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する」という規定です(法法80E)。 還付請求を行った法人の前期の所得金額や当期の欠損金額等に誤りがないか、また租税回避目的でこの制度が悪用されていないか等を慎重に確認した上で、還付金を支払うこととしているため、このような規定が設けられているようです。 なお、制度上、還付請求日(確定申告書の提出期限内に行われたものはその提出期限)の翌日以後3か月を経過した日から、還付支払決定の日又は充当の日までの間について年7.3%の還付加算金が加算される仕組みとなっている(法法80F)ことから、還付請求後3か月以内に調査が行われるケースが多いのではないかといわれています。 |
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■全てが調査対象となるか? | ||||||||||
還付請求をすると“必ず”調査がおこなわれるとか“原則”おこなわれるとか、色々な言い回しがされているようですが、実務上全てについて調査対象とするのは困難と思われることから、金額やその法人の過去の状況等を勘案して対象を絞り込むのではないかと推察します。(これはあくまで憶測ですが) いたずらに調査を恐れてせっかくの制度を利用しないというのはお薦めできませんが、調査があれば税理士の立会料も発生することでしょうから、戻る金額がわずかなら還付請求はしないでおくのも選択肢の1つではあります。(次年度以降の黒字から欠損金を引ける制度は従来どおりあるのですから、還付請求しないのがまるっきり損というわけではありません) |
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【関連リンク】
《国税庁》「欠損金の繰戻しによる還付の請求」 |
※掲載記事は掲載日現在の法令等に基づくものです。その後の制度の廃止・変更等には対応していませんので、ご注意ください。