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(2008/02/10) 証券取引―特定口座か一般口座か?

 株を売買して得た利益にかかる税金かは「申告分離課税」といって、原則としては投資家が自分で申告することになっています。そのためには、1年分の取引をまとめて損益を計算しなければなりません。
 そんな面倒な事務負担を軽減してくれるのが「特定口座」。特定口座を開くと、証券会社が損益を計算して「年間取引報告書」を作ってくれます。
 特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があります。また、特定口座を選択しない場合には自動的に「一般口座」が開設されます。結局3つの選択肢があるわけですが、どれを選んだらどうなるのか、なかなかわかりにくいかもしれません。

■株取引は申告が必要?
 株の売買で利益が出ても「源泉あり」の特定口座を選んでいると、証券会社が自動的に利益の10%を税金として納めてくれるので、申告は必要ありません。ただ「源泉なし」の特定口座や一般口座を保有していて収益を得た場合は、申告の必要があります。ただし、サラリーマンなど給与所得者で、一定の条件(後述)を満たす場合、利益が20万円以下なら確定申告は不要です。

■株の損は3年間繰り越すことができる
 株で損をした場合は、翌年以降に株で利益が出た場合にそこから引くことができます。これが「損失の繰越」で、繰越は3年間にわたって可能です。この制度を利用するには確定申告が必要です。

■株の利益と他の所得との損益通算
 株の売買利益は申告分離課税ですから、他の所得(給与所得や不動産所得など)との損益通算(一方の利益と他方の損失を相殺すること)はできません。株式型投資信託の解約損や償還損、株の信用取引、ETFやREIT、外国株などの所得となら損益通算が可能です。

■一般口座と特定口座のメリット・デメリット
表にまとめると、次のようになります。
口座種別 メリット デメリット(もしくは注意点) 証券会社から税務署への報告
一般口座 ●全ての特例が使える ●確定申告が必要
●自分で損益を計算しなければならない
1回につき30万円超の売却の際に支払調書が提出される
特定
口座
源泉徴収なし ●確定申告は必要だが計算は簡単(年間取引報告書から写すだけ) ●確定申告が必要
●みなし取得費の特例が使えない
年間取引報告書の提出あり
源泉徴収あり ●確定申告は不要
●いくら利益が出ても扶養から外れることはない(取引者が誰かの扶養に入っている場合)
●売却のたびに税金を納める(天引きされる)ため、その分受け取る金額が減ることになり、資金効率が悪くなる
●損失が出た場合は確定申告しないと繰越控除は受けられない
●「元本1千万円までの譲渡益非課税」や、給与所得者の「20万円以下の譲渡益申告不要」の特例が使えない
●学生や主婦などで誰かの扶養に入っている人が申告をすると、株の利益が合計所得金額に加算され、扶養から外れたり国民健康保険料が値上がりする場合がある
なし

■特例の恩恵を享受したいなら、一般口座
 特定口座を選択しないと自動的に一般口座が開設されます。一般口座は損益計算や確定申告などの煩わしさはあるものの、証券税制の特例の全てを使うことができます。
特例の種類 特例の内容
元本1千万円まで非課税 平成13.11.30〜14.12.31までに購入した株を、平成17.1.1〜19.12.31の間に売却した場合には、投資元本1千万円までの譲渡益が非課税になる。
20万円以下の譲渡益申告不要 サラリーマンなど給与所得者で、一定の条件(年収が2千万円以下、会社で年末調整が済んでいる、株と他の所得の合計が20万円以下、他に確定申告をするものがない)を満たす場合、利益が20万円以下なら確定申告は不要
みなし取得費 株式を取得したときの取得単価が不明な場合などに使うことができる、取得にかかった金額のことで、平成13年10月1日の終値の80%を指します。ただし、期間の制限があり、平成13年9月30日以前に取得した上場株式等で、平成15年〜平成22年までに売却したものに限り使うことができます。(⇒国税庁HP「平成13年10月1日の株価を調べる」)
また、実際の取得額が必ずしも不明でなくても、実際の取得費よりみなし取得費を使った方が得な場合(みなし取得費の方が高い場合)については、遠慮なく使うことができます。

■取引者のタイプ別に見る「オススメ口座」
 取引をする人のタイプ(給与所得者か、他の人の扶養に入っているかなど)によって、だいたいですがオトクになる口座を分けることができます。
一般口座 源泉ありの
特定口座
源泉なしの
特定口座
サラリーマン・OL
専業主婦・学生
年金生活者
◎=オススメ ○=まあまあオススメ △=あまりオススメでない
(いずれも「絶対」ということはありません)

サラリーマンやOLなどが「源泉徴収あり」の特定口座を選んだ場合、年間の譲渡益が20万円以下であっても税金を払う羽目になるため、取引が少ない人は、一般口座か「源泉徴収なし」の特定口座を選択した方がよさそうです。

他の人の扶養に入っている主婦や学生の場合、「源泉なし」や一般口座を選んで確定申告すると、年間の合計所得が38万円を超えた場合に扶養から外れてしまうこともありますから、「源泉あり」を選んだ方が賢明と思われます。

医療費控除を受ける場合や年金生活者など、もともと確定申告が必要な人は一般口座か「源泉徴収なし」の特定口座。一般的には損益計算が面倒ならば「源泉徴収なし」の特定口座の方がよさそうです。


※掲載記事は掲載日現在の法令等に基づくものです。その後の制度の廃止・変更等には対応していませんので、ご注意ください。


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