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(2004/04/06) 現物出資の財産価格証明

 会社の設立には資本金が必要です。「出資」と呼ばれる行為ですが、これには現金による方法以外に、現金以外の「物」による方法があります。通常の出資と区別して、現物(げんぶつ)出資と呼ばれます。

現物出資とは 現物出資とは、法人の株主(有限会社の場合は社員)となるための出資金として、現金の代わりに自己の所有する財産を提供することを言います。
 例えば、会社を設立する際には、集まった資本金を使って機械設備や机・棚・電話・パソコンといった什器備品を買い揃えますが、こういった物品を最初から「物」という形で提供することもできるわけです。もちろん動産だけでなく不動産でもOKです。また、必ずしも有形資産には限らず、営業権(のれん)のような無形資産も対象になります。

現物出資のメリット 個人で事業を営んでいた人が法人成りしようとしたとき、そこにはすでに機械や備品といった事業のための資産が少なからずあるはずです。これらを出資の対象にできれば、用意する現金が少なくてすみます。有限会社の場合、300万円全額を現物出資にすれば、銀行で保管金証明を出してもらう必要もなくなり、事務の手間が省けるだけでなく一定期間使わずに寝かせておかなければならない「死に金」も発生しません。

現物出資の問題点 しかし、どんな財産にせよ、出資に当たっては必ず「金銭」に置き換える必要があります。財務諸表の資本金の欄に「机1個」と書くわけにはいきません。必ず金額で表示する必要があるのです。そこで必要になってくるのが「評価」です。新品であれば購入価格を評価額にすれば問題ありません。しかし通常は使いかけの中古品です。するとこれをいくらで評価するかが問題になってきます。

財産価格の証明 出資財産の評価は公正妥当なものでなければなりません。そうでなければ他の現金での出資者との間で不公平が生じたり、資本金額の表示に誤りが生じることにより将来債権者等に損害を与える可能性があるからです。
 そこで、商法は発起人らによる恣意(しい)的な評価を防ぐために財産価格の証明を特定の人間に限定しています(173条)。(現物出資額が資本金額の1/5以下でかつ500万円以下であれば証明は不要(取締役の調査のみでOK))

財産価格の証明者 以前は、財産価格の証明は裁判所の選任した検査役に限られていました。この検査役は、通常、弁護士です。しかし多額の費用がかかるため、有限会社の300万円の出資金程度では利用されてこなかったのが現状です。(従来は新規設立時よりもむしろ、ある程度規模の大きな法人における営業譲渡や合併といったケースでの利用がほとんど)
 そこで、これを解消すべく商法が改正され、平成15年4月1日からは、弁護士・公認会計士・税理士の証明があれば裁判所に検査役を請求しなくてもよいことになりました(商法173条2項3号)。(ただし、対象財産が不動産である場合は、不動産鑑定士の鑑定も必要)
 これにより、今後は比較的安価で証明が受けられることになり、小規模会社の設立においても現物出資が利用されることが増えると予想されます。

証明者の責任 財産価格の証明をした専門家は、後日その評価に著しい誤りがあることが判明した場合には、正しい評価額との差額(不足額)について賠償する責任を負います。(注意義務違反の場合に限る)
 したがって、証明者は自己の責任において独立公平な立場で証明をおこなう必要がありますので、結果として証明金額が依頼者の望む金額にならないかもしれません。

当事務所での対応 現物出資の財産価格証明はこれまで全国的にも実例が少なく、弁護士でも実務実績は少ないようです。まして、平成15年から携わることができるようになった公認会計士・税理士においてはおそらく(首都圏を除けば)ほとんど実務実績がないものと思われます。
 当事務所では、少例ですが実績があります。起業・法人化を目指す方のため、利用できる制度は大いに利用できるよう、サポートいたします。(料金については、こちらをご覧ください) 設立業務一式はもちろん、証明業務単独でもお引き受けしておりますので、お気軽にご相談ください。

【加筆】2006年5月1日の会社法施行により、資本金規制が無くなり、会社設立までの間資本金が凍結されることも無くなりました。また、有限会社法の廃止により有限会社の新規設立はできなくなりました。
 ただし、資本金規制が無くなったから現物出資のニーズが無いかといえばそうではなく、たとえ法規制が無くとも資本金の額をできるだけ多くしたいのであれば現物出資は今でも有効な手段です。
 また、会社法では旧商法の「資本金額の1/5以下」という制限が撤廃され、単純に500万円までであれば税理士等の価格証明も不要になりました。発起人が自身にて評価し取締役による調査が通ればOKです。ただし、もちろん上記「証明者の責任」は負うことになります(後日間違いが発覚した場合、自分は評価の専門家でないという言い訳は通りません)ので、慎重な評価が必要です。

※本記事は作成日当時の内容であり、条文も旧商法のものです。現在は会社法の中に同内容の条文があります(条文対比まではいたしておりません)。


※掲載記事は掲載日現在の法令等に基づくものです。その後の制度の廃止・変更等には対応していませんので、ご注意ください。