15年1月1日より、新しい証券税制がスタートしています。と言っても、この日を境に一気に変わったわけではなく、適用時期などが段階的になっており、また時限的なものと恒久的なものとがあり、さらに法改正の過程で予定されていた改正が変更されたりと、かなりわかりにくくなっていますので、一度情報を整理してみましょう。
主な改正は以下の4点と言えるでしょう。
- 上場株式等※の売却益・・・源泉分離課税の廃止。税率が20%→10%に(期間限定)。
- 〃 損・・・単年度控除→繰越控除が可能に。(恒久的)
- 上場株式等の配当金・・・申告が不要に。さらに税率が10%に(期間限定)。
- 売却益課税が申告分離課税に一本化・・・特定口座制度の創設。(恒久的)
- みなし取得費特例・・・上場株式等の売却時の取得費計算を有利に。(期間限定)
- 購入額1,000万円までの非課税措置(期間限定)
1.上場株式等の売却益
上場株式等の売却益にかかる税率(現行20%)が、平成15年1月〜19年末までの間、10%に優遇されます。
なお、株式投資信託(公募)の分配金および解約・償還差益については平成16年1月〜20年3月末までの間、10%に優遇されます。
2.上場株式等の売却損失
平成15年1月から、上場株式等を売却した場合に生じた損失のうち、その年に控除しきれない金額については、確定申告を条件に翌年以降3年間にわたって、株式等の譲渡所得等の金額から控除することができるようになりました。
なお、株式投資信託(公募)の解約時や償還時に損失が生じた場合も、確定申告を条件に株式等の譲渡益と損益通算することが可能となりました。
3.上場株式等の配当金
上場株式等の配当金への課税方法が源泉徴収方式(20%)に一本化され、受取配当金額によらず、確定申告は不要となります。
さらに、税率も平成15年4月1日〜20年3月末までの間、10%に優遇されます。
4.売却益課税が申告分離課税に一本化
平成15年1月より、上場株式等の売却益にかかる課税方法が申告分離課税に一本化されたことに伴い、原則として確定申告が必要となりました。
ただし、新しく導入された「特定口座」を利用することで(選択制です)証券会社から年間取引報告書を発行してもらうことができ、申告に必要な損益計算の手間を省くことができます。また、その際に源泉徴収制度を選択しておけば、確定申告は不要になります。
この特定口座には、証券会社に保護預けしてある上場株式等のほか、手元保管のいわゆるタンス株も入庫することができますが、平成15年4月1日〜16年12月末までの期間に限られるので、注意が必要です。
5.みなし取得費特例
平成13年9月30日以前から引き続き所有していた上場株式等を、平成15年1月1日〜22年12月末までの間に売却した場合における取得費は、その上場株式等の「実際の取得費」と「平成13年10月1日の終値の80%相当額」を比較して、いずれか有利な方を選択することができます。
6.購入額1,000万円までの非課税措置
平成13年11月30日〜14年12月末までの間に購入した上場株式等を平成17年〜19年の間に証券会社を通じて売却した場合、その購入額が1,000万円に達するまでの譲渡益は非課税となります。(複数の銘柄、もしくは複数回に分けて売却した中で、どれを選択するかは自由です)
※「上場株式等」…平成14年12月以前に源泉分離課税が選択可能であったもののことで、具体的には主として以下の証券が該当します。
- 上場株式(上場新株引受権証書、ワラントを含む)
- 上場新株予約権付社債(上場転換社債、上場新株引受権付社債)
- カントリーファンド(=上場されている外国の投資法人の投資口)
- 店頭売買登録銘柄株式、店頭転換社債型新株予約権付社債
- 店頭管理銘柄株式
- 日銀出資証券
- 外国市場(ナスダック市場等を含む)で売買されている、上記1、2の証券(会社型投信を含む)
- 上場優先出資証券
- 上場株式投信の受益証券(ETF等を含む)
- J-REIT(=上場不動産投信)、ベンチャーファンド(=上場未公開株式等投資法人の投資口)
※掲載記事は掲載日現在の法令等に基づくものです。その後の制度の廃止・変更等には対応していませんので、ご注意ください。