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会計参与について

 会社の「機関」というと、取締役と監査役が思い浮かぶと思いますが、会社法(2006年5月1日施行)の制定にともなって新たに「会計参与」という役職が追加されました。

1.会計参与とは

 株式会社の役員の一種で、計算書類(決算書等)の作成・保管・開示を主な職務とします。税理士または公認会計士しか就任することができません。
 会計の専門家が会社の機関として責任を持って計算書類を作成することで、計算書類に信頼性を持たせようとすることを目的として新設されました。主な設置対象としては、会計士監査が義務付けられていない中小企業が想定されています。

2.就任資格

 会計参与に就任できるのは、税理士または公認会計士だけです(これらの法人である税理士法人・監査法人も含みます)。

3.設置の条件

 設置は任意であり、設置しなければならない会社もなければ、設置できない会社もありません。

4.制度創設の背景

 株主やこれからその会社の株主になるかもしれない投資家、金融機関や取引先等の債権者といった利害関係者が会社の財務内容を知りたいときに見るのが決算書です。決算書は会社が作ります(税理士等に依頼して作ってもらっていても作成者はあくまで会社です)が、利害関係者からしてみると、会社が自ら作った決算書が「適正である」かどうかが気にかかるところです。そういった決算書の適正性にお墨付きを与えるのが、これまでは会計監査でした。
 会計監査には、公認会計士による監査(会計士監査)と監査役による監査(監査役監査)とがあります。会計士監査はいうまでもなく公認会計士という会計のプロがおこなうものですから相当の信頼性があります(近年のカネボウやライブドアによる粉飾事件により監査制度の有効性が疑問視されていますが、このような犯罪行為までここでは論じません)。しかし監査役は誰でも(極端な場合小学生でも)就任することができ、中小企業では「名前だけ」という場合が少なくありません。つまり監査自体本当におこなわれているかどうかあやしいと思われており、実際のところ、中小企業の監査役監査を信用している金融機関は1つもないといってよいです(すべての中小企業の監査役監査が信用できないといっているわけではありません)。
 会計士監査が義務付けられていない非上場会社でも任意で会計士監査は受けることはできますが、多額な費用(少なくとも千万円単位)がかかりますから、上場会社に匹敵する規模の会社でないと難しいと思います。
 そこで目を付けられたのが、ほとんどの中小企業の決算書作成に関わっている税理士・公認会計士です。実質有名無実となっている監査役監査に代わり、税理士・公認会計士という公的資格を持った職業会計専門家に作成の段階で責任を持って適正性を担保してもらうための役職を、法律の中ではっきりと示したのです(同時に特定要件に該当しないほとんどの小規模会社では監査役の設置が任意になりました)。
 世界的にも類を見ない、日本独自の新しい制度です。

5.会計参与の職務

【日常】会計参与は、取締役(または執行役)と共同して計算書類(決算書等)を作成します。計算書類の作成といっても、決算の時だけ働くわけではありません。決算書は1年間の財務活動の積み重ねですから、1年を通して関わることになります。総務・経理の従業員からの資料収集や聞き取りはもちろん、財務に関わる取締役会に出席し、意見を述べたりする権限があります(あくまで財務関係の会議だけであり、経営に参加したり業務を監督したりするわけではなく、その点で取締役や監査役とは異なります)。
【決算・総会】会計参与は株主総会に出席し、計算書類に関して株主から質疑があれば、説明しなければなりません。
【決算後】会計参与は、計算書類を会社とは別に5年間保存しておかなければなりません。そして保存してある計算書類について、株主や債権者からの閲覧請求があれば開示しなければなりません。

6.顧問税理士・会計士との違い

【位置付け】顧問税理士や会計士は、あくまでも会社の外からの業務支援者であり業務受託者ですが、これに対し会計参与は、会社内部における計算書類の作成機関として位置付けられています。
【選任・任期・辞任】税理士・会計士との顧問契約はいつでも締結できますが、会計参与の選任には株主総会決議が必要です。
 会計参与には任期が定められています。取り決めがない場合は2年と法定されており、定款で定めれば1〜10年の範囲で変更が可能です(株式譲渡制限会社に限る)。
 任期の定めがある以上、会社の都合でむやみに途中解任することはできません。一方、会計参与には辞任する権利はありますが、後任の会計参与が選任されるまでは辞任できません(後任がなかなか決まらない場合には裁判所に申し立てることになります)。顧問税理士・会計士のように、例えば社長と税理士の反りが合わないからといって「今日で打ち切り」というわけにはいきません。
【登記】会計参与は取締役・監査役と同様、登記簿に記載されますが、顧問税理士・会計士が登記簿に載ることはありません。
【責任】顧問税理士・会計士は民法上の責任を負いますが、会計参与は商法上の責任を負い、会社や第三者に対する責任は、社外取締役に準じます。
【報酬】会計参与に支払われる報酬は、顧問料等の税理士報酬ではなく役員報酬(=給与)です。
 税理士・会計士報酬額は会社と税理士・会計士との間で自由に取り決められますが、会計参与報酬は定款に定めるかもしくは株主総会で決定します。
 また、顧問税理士・会計士と会計参与とでは、その業務範囲も負うべき責任もまったく異なりますから、受け取る報酬額も大きく違ってくると考えられます。
 なお、税理士報酬は消費税の課税対象であるのに対し、会計参与報酬は給与ですから消費税の課税対象外です。

会計参与の職務(まとめ)
設 置 任意
職 務
@ 計算書類・附属明細書・臨時計算書類・連結計算書類および会計参与報告書の作成
A 総会における説明
B 計算書類の保存(5年間)および開示
資 格 税理士または公認会計士(法人(=税理士法人・監査法人)を含む)
選 任 株主総会で選任
任 期 原則2年(株式譲渡制限会社であれば1〜10年の範囲で変更可能)
報 酬 取締役と同様の規律に従う
登 記 要登記(設置の旨・氏名等・備置き場所等)
責 任 会社・第三者に対する責任は、社外取締役と同様
会社に対する責任は、株主代表訴訟の対象